皆様こんにちは、金の鳳凰座のまっちゃんです。今回は、タダ同然のお茶を「1杯5000円」で売り出し大逆転…佐賀・嬉野の茶農家が”薄利多売”をやめて起きたことを紹介します。
「うれしの茶」に起きている地殻変動
佐賀県嬉野市は、日本三大美肌の湯「嬉野温泉」、400年以上の歴史を持つ「肥前吉田焼」、そして「うれしの茶」で知られています。近年、この「うれしの茶」に大きな変革が起きています。嬉野市の茶農家たちが2017年から1杯5000円で特産品「うれしの茶」を提供する観光プログラムを始めたのです。この取り組みは「ティーツーリズム」と呼ばれ、茶農家自らがお茶を振る舞い、参加者と対話するというものです。
筆者が体験したのは、嬉野市内を一望できる山の上の茶畑にある屋外茶室「天茶台」でのティーツーリズムプログラムです。ここでは、肥前吉田焼の白い茶器に注がれた煎茶が1杯5000円で提供されます。このプログラムは、2017年に誕生し、徐々に料金が上昇して現在の水準に達しました。参加料金は一人1万5000円(税別)で、茶菓子も付いています。
かつては「お茶はタダ」が当たり前だった
以前は、嬉野の旅館やホテルでは、お茶は基本的に無料で提供されていました。地元の名産品であるにもかかわらず、お茶でお金を取るという意識はなかったのです。この傾向は日本全国でも同様で、飲食店でもお茶や水は無料で提供されることが多いです。しかし、茶農家のビジネスは安泰ではありませんでした。時代の変遷とともに茶葉の市場価格は下がり続け、全国茶生産団体連合会の調べによると、お茶(普通煎茶の一番茶)の平均価格は2006年に1キログラムあたり2500円を超えていたが、2022年には1944円にまで下落しています。
安売りからの脱却を図った嬉野の茶産業
嬉野市の茶農家、北野秀一さんは、現在3.6ヘクタールの茶畑で農薬と化学肥料を一切使わない有機栽培を行う生産者です。北野さんは、23年前に就農した際、この収入で家族を養うのは厳しいと感じ、冬場は造園業の仕事を始めました。しかし、今ではお茶の仕事だけに専念できるようになり、総売り上げも2015年頃と比べて約2倍に増えました。
この成功の鍵は、「お茶はタダではない」という考え方に基づく、安売りからの脱却です。ティーツーリズムを通じて、高価格で提供するお茶の価値を再評価し、観光客にその魅力を伝えることで、茶農家としての収益を大幅に改善することができました。
嬉野市の他の茶農家や旅館も、この取り組みを取り入れています。地元高級旅館の和多屋別荘では、客室に置いてある茶葉を除き、施設内で飲むお茶はすべて有料で提供されています。これにより、お茶の価値が再評価され、観光客にとっても特別な体験として受け入れられるようになりました。
観光プログラム「ティーツーリズム」の意義
ティーツーリズムは、単なる観光プログラムにとどまらず、地元の茶産業を支える重要な役割を果たしています。お茶の価値を再認識させ、観光客に対してその魅力を伝えることで、茶農家の収益を向上させるだけでなく、地元の経済にも貢献しています。
また、ティーツーリズムを通じて、お茶の歴史や文化、栽培方法などを学ぶことができ、観光客にとっても貴重な体験となります。このような取り組みは、観光地としての魅力を高めるだけでなく、地元の茶産業の持続可能な発展にも寄与しています。
まとめ
嬉野市の茶農家たちが取り組んだ「ティーツーリズム」は、「お茶はタダではない」という新しい価値観を生み出し、地元の茶産業を再評価するきっかけとなりました。1杯5000円という高価格で提供されるお茶は、その価値を見直され、観光客にとっても特別な体験として受け入れられています。この取り組みは、地元の経済にも貢献し、茶産業の持続可能な発展を支えています。今後も、嬉野市の茶産業がさらに発展し、多くの人々にその魅力を伝えていくことが期待されます。
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