楽天・三木谷社長が小泉農水大臣と面会 備蓄米を「5キロ2000円台」で販売へ——ネット販売で新たな流通モデルを提案
2025年5月、楽天グループの三木谷浩史社長が農林水産大臣の小泉進次郎氏と面会し、政府が保有する「備蓄米」の販売について、楽天として随意契約に参加する意向を示しました。この面会では、消費者により安価で安心な米を届けるため、5キロ2000円台という価格帯でのネット販売の実現に向けて意見が交わされました。
備蓄米とは? そして「随意契約」とは?
備蓄米とは、食糧安全保障の観点から政府が一定量を備蓄しているお米のことです。国内で不作や災害などがあった場合に備え、農林水産省が買い入れて保管しています。この備蓄米は、古くなる前に「計画的払出し」という形で市場に流通させ、品質が落ちないうちに活用されています。
この際に用いられる「随意契約」は、特定の企業と直接交渉し契約を結ぶ方式で、競争入札とは異なり、迅速な対応が可能です。ただし、公平性や透明性の確保が課題とされてきました。
小泉農水大臣「多様な流通の形を模索したい」
小泉農水大臣は、会見の中で以下のように語りました。
「ネット販売も含めて様々な流通の形を模索していかないといけない。これまでのやり方にこだわらず、新しい試みに挑戦していきたい。」
政府としても、ネット販売のような新たな流通経路を活用することで、消費者への直接的な供給を可能にし、中間コストの削減を狙っています。
楽天が備蓄米のネット販売に参入
この政府の方針を受け、楽天の三木谷社長は備蓄米の流通において、楽天市場など自社のプラットフォームを活用して販売を行う方針を明らかにしました。さらに、精米機とのセット販売など、消費者の利便性を考えた新しい商品展開も検討しているとのことです。
三木谷社長は次のように語っています。
「今回の備蓄米を一つの起爆剤として、直接卸してもらって販売をしていくということが行えれば、一つの突破口になる。」
つまり、これまで問屋や小売を通じていた米の流通経路を見直し、より効率的かつ消費者目線の販売スタイルを構築する狙いがあるのです。
現在、スーパーなどで販売されている米の価格は、5キロあたり3000円前後が一般的です。今回のプロジェクトでは、それを2000円台に抑えることを目指しています。
もちろん、この価格を実現するためには、物流や精米などの工程にかかるコストをどこまで削減できるかがカギになります。三木谷社長は、楽天として大きな利益を追求するのではなく、「できるだけ多くの人においしい米を届ける」という社会的使命を優先すると語っています。
「我々の方はですね、大幅な利益を上げようということはなくて、本当にできる限り、良い米を安く届けたいと考えています。」
専門家は課題も指摘
こうした楽天の取り組みに対して、専門家の中には慎重な意見もあります。
・備蓄米は品質にばらつきがあり、消費者の期待を満たせるかどうかは流通・精米の工夫次第。
・ネット販売による新しい販路が生産者価格にどう影響を与えるかは不透明。
・随意契約による特定企業との取り引きが、公平性を欠く恐れもある。
こうした課題にどう向き合い、透明性と競争力を両立させるかが、今後の焦点になりそうです。
楽天と農水省が進める今回のプロジェクトは、単なる価格の問題にとどまらず、日本の米の流通の在り方に一石を投じる可能性を秘めています。ネットを通じた直接販売により、農家の収益改善、消費者の満足度向上、さらにはフードロスの削減など、多方面にプラスの影響が期待されます。
今後、他の企業もこうした取り組みに参入することで、より多様で効率的な食糧流通の仕組みが生まれていくかもしれません。
政府と民間が連携し、日本の「食」の未来に向けた新しい挑戦が、いま始まろうとしています。
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